神の警鐘

エイズが依然猛威を振るっています。特に政治的、経済的混乱の続いているアフリカ諸国に於いて深刻なようです。
これらの国はその日の食料にも事欠くような貧困の中にあります。その上、エイズ教育も性感染症防止の教育も十分では
ありません。一番安くて手軽に予防できるコンドームの着用や普及さえも十分ではないと言われています。
大げさに言えば一国が滅亡しかねないような状態だと言われています。これらの国々では先進国で使用されている薬を、
もっと安く輸入できないか製薬会社に交渉をしているようですが、なかなか快い返事が貰えないようです。製薬会社にして
みれば莫大な開発費をかけて作った薬を、儲けなしで提供するとか製法のノウハウを公開することは、大変な決断を要する
事だろうと思います。しかし、これらの国々に安価に供与できれば、どれほど多くの命を救うことが出来るでしょうか。命を
救う事までは無理としても苦しみを和らげ、一日でも命を延ばすことは可能なはずなのです。
かつて猛威を振るった天然痘の予防に、牛痘で立ち向かったジェンナーのように人道的見地から、是非とも先端科学の
恩恵をこれらの国々に提供して貰いたいと切に願う次第です。
それにしてもエイズという病気が流行し始めた頃、アメリカが性に対して病んだ国であると言うことを強く感じ、これこそ
性の氾濫に対する神の警鐘ではないかと思ったものです。
エイズの出所は未だ明らかにはなっていないようです。アフリカの密林深くに封じ込められていた、この病気の元になった
ウイルスが、人間が密林を破壊してしまったために人間社会に入ってくるようになったのではないかと言われています。
また一説には、アメリカやソ連が生物兵器開発の際、作り出したキメラウイルスではないかとも言われています。ウイルス
の出所はともかく、病んだ現代社会の何かが作りだしたものであることには間違いがないようです。
かつて南アメリカのごく一部に流行する風土病であった梅毒という病気が、コロンブスのアメリカ大陸の発見が契機と
なって、スペインやポルトガルなどにより世界中に伝搬された事と似通った現象と言えるのではないでしょうか。タバコと
同じように大航海時代の船乗り達によって、瞬く間に世界中に伝搬したのです。
そして今度はBSE(プリオン病)というエイズ以上にやっかいな病気が人間社会を襲っています。恐ろしいのは人間も
動物も共通に持っているタンパク質が原因物質ではないかと言う点です。更に恐ろしいのはエイズや梅毒は主として
性感染症であるのに対して、食を介して人間の中に取り込まれると言う事です。食は人や動物にとって最も基本的な
営みであります。しかも食べるという行為は人間が生きていく上で欠く事の出来ない行為です。成人も幼児も一様に
関わりのある事です。成人は食肉や食肉の加工品から、乳幼児は牛乳などからも取り込まれると言います。
日本は政府の対応に手抜かりがあったために混乱の極みにあります。今日もなお狂牛病(BSE)の発症が見られます。
ヨーロッパから輸入した脳の硬膜から感染したとされるヤコブ病患者も発生し、今後も発症患者が出ることが懸念
されています。
このような恐ろしい病気が次々に人間社会に襲いかかっているのは、人間が自分の都合の良いように自然を
破壊し、自然の摂理をねじ曲げて来たからに他なりません。これを神の警鐘と言わなくて何と言えばよいのでしょうか。
2002年6月25日掲載
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