映画「デーヴ」を観て

日本では小渕首相が脳梗塞で倒れ、森首相が選ばれるまでのいきさつが密室政治だと言うことで、国会の中でも
大問題となった。一国の宰相を選出するに当たっては、プロセスがきちんとしていなければならない。
野党の質問に対し、青木官房長官の発言は二転三転した。とても重要な判断など出来そうもない、重症状態の
小渕氏がよろしくと言ったとか、その言葉は青木氏に全権を委ねた言葉だとか、あり得ないような事を答弁している。
脳梗塞で倒れたような人が、そんな大事なことを口に出来るだろうか。絶対にあり得ない事だ。
こんな日本でのスキャンダラスな話が新聞紙上をにぎわせている時、こんな映画を見たので紹介したい。
「デーヴ」という題名の映画は、海の向こうのアメリカのお話である。大統領に似ていることから、何でも屋のデーヴは
シークレットサービスに一時的な身代わりを頼まれる。ところが当の大統領が、浮気中に脳卒中で危篤になってしまう。
日本での官房長官に当たる大統領の側近、主席補佐官ボブは大統領の身代わりを立てて、緊急事態を乗り切ろうと
計画する。その代役となったデーヴの方こそ災難である。かくして姿形はそっくりさんだが大統領とはまるで性格の
異なるにわか大統領の誕生となる。デーヴは最初とまどいながらも、持ち前の優しさとユーモアで次第に国民の支持
を獲得、大統領の浮気などで冷め切っていた大統領夫人のエレンの心までつかんでいく。
大統領夫人はホームレスの子供達に政府の資金援助を望んでいた。大統領を伴って孤児院を訪問した時、
デーヴの意外な行動に不信を抱いた婦人は、デーヴに事のいきさつを問いつめる。かつての大統領はホームレスの
子供の事などには、まるで関心がなかったからだ。その大統領が子供に話しかけ、手品のまねごとなどで子供の
相手をしてやったりしたのだ。
丁度その頃、予算申請のあったホームレスの資金援助の決済を、大統領の指示を仰ぐことなく主席補佐官のボブが
勝手に却下してしまう。それを聞いた大統領夫人は怒ってデーヴに問いつめる。問いつめられても何も知らない
デーヴには返事が出来ない。これが主席補佐官の勝手な行動だと知ったデーヴは緊急閣議を召集し、各省の予算
を切りつめさせて、見事、申請のあった資金を捻出する。
腹の虫の収まらないのは主席補佐官である。操り人形にと思っていたデーヴが思いの外、国民の指示まで取り付け
なおかつ、大統領夫人の心までつかんでしまった。しかも自分のやったことをくつがえされ、おまけに首にまでされてしまった。
彼はデーヴを大統領の座から引き下ろすために、大統領のスキャンダルをでっち上げる。デーヴは議場に引っ張り
出され事の真相についての釈明を求められる。デーヴはスキャンダルは事実だと認めた後、演壇で倒れてしまう。
いつまでも大統領の座にとどまるつもりのなかったデーヴは自分が消えた後、副大統領にその席を譲るつもりでいた。
長い間、主席補佐官等によって大統領から遠ざけられていた副大統領とも会って、自分の後を託せるような人物
かどうかを確かめておいたのだ。
デーヴは病院にかつぎ込まれた時、計画通り、危篤のままの本物の大統領と入れ替わり、病院を抜け出して
元のデーヴに戻ってしまう。
それから数ヶ月、本物の大統領は死んでしまい、めでたく後任の大統領として副大統領が就任する。
そして、ひそかにデーヴが恋していた元大統領婦人エレンがデーヴの会社を訪ねてくる。
再会を果たした二人が、優しく抱き合ってキスをするところでハッピーエンドとなる。
日本の後任首相の選出のいきさつに較べて、なんとさわやかで明るい映画であろうか。
現実には、アメリカの政府といえども表に出せないようなことはあるだろう。
しかし、大統領が身近な存在であるアメリカだからこそ描くことの出来たお話とも言える。
2000年6月26日掲載
最近、図書館にもビデオを置くようになりました。このテープも図書館で借りたものです。
デーヴとビル・ミッチェル大統領:ケビン・クライン
大統領夫人:シガニー・ウイーバー
ナンス副大統領:ベン・キングスレー
監督:アイバン・ライトマン
脚本:ゲーリー・ロス
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