フラクタル

最近よく耳にするようになった言葉に「フラクタル」という言葉があります。数週間前、民放のハイビジョン放送で
モナ・リザの絵の中に、フラクタルに関する謎が隠されているという話が取り上げられていました。つまり、モナ・リザ
を描いたレオナルド・ダヴィンチは絵の中に意識的にフラクタルを描き込んだと言うのです。
そもそもフラクタルとはいったい何でしょう。ネット上で探したサイトから引用させて貰うと次のような事になります。
(ある図形の一部が,それを含む全体と相似であるとき,その部分または全体は自己相似性を持つという. しかし,
単にこれだけではフラクタルとはいわない. ある図形がフラクタルであるためには, 任意の場所で切り取った任意
の大きさの断片が自己相似性を持たなければならない.このように完全な意味での自己相似性を持つ図形が
フラクタル図形である.
フラクタル(Fractal)という言葉はこの分野の創始者マンデルブロの造語で,部分や断片を意味するFractionに
由来する.通常,「フラクタルな図形」というように形容詞的に使われるが,フラクタルな性質という意味で名詞として
使われることも多い.
フラクタル図形の特徴は小数次元を持つことである.ある図形が全体を1/aに縮小した自己相似形b個からなる
とき,その図形のフラクタル次元DはD=log(b)/log(a)によって定義される.式を見ればわかるように,一般的に
この値は小数になる.
自然界には数多くのフラクタル図形が存在する.たとえば,空に浮かぶ雲,寒い日に窓ガラスに付着した霜,葉脈
など,みなフラクタルな構造を持つと考えられる.一緒に地上の物体や飛行機などが写っていない雲の写真を見て
いると,どのくらいの大きさなのか分からないことがよくある.このように固有のスケールを持たないこともフラクタル
図形の大きな特徴である.)
お分かり頂けたでしょうか。特に後半の解説の中に具体例で良く書き表されているように思います。つまり、この宇宙
のありとあらゆるものは共通の図形を次々とつなぎ合わせたもので成り立っていると言うことではないでしょうか。地上
をミクロの目で見てみましょう。ミクロにしても凹凸は数限りなくあります。決して平坦ではありません。更に拡大して
みても、やはり凹凸は消えません。こうして地球規模の目で眺めたときにも、山あり谷ありの凹凸は繰り返されています。
火星にも地球の衛星である月の表面にも、同じような凹凸が数限りなくあります。その普遍性は有機物、無機物の区別
なく存在します。そして、種を越えても存在しています。
例えば木を例に取って見ましょう。木には根があります。根の部分は奇妙にも地上の部分と相似形です。その形は
自らの葉っぱの葉脈にも表れています。木の根や枝と同じような形に見えるのは人間や動物の血管においても同じです。
学校の理科室にあった血管の模型を思い出して下さい。心臓から出た大動脈は、やがていくつもに枝分かれし細い
動脈となります。そして更に枝分かれして微細な血管となって体の末端に至ります。静脈も同じような構造で成り立って
います。
スケールを大きくしてみましょう。川はどうでしょうか。河口の大きな流れから川を遡れば、次第に枝分かれして細い
流れとなります。その細い流れも更に枝分かれをしています。そして一粒の雨水から始まる流れも同じような形をして
いるのです。すべてが同じ形の連続なのです。
川の流れには渦があります。平坦な流れに見えるところでも、障害物のあるところでは渦を巻いています。大きな
渦の中には小さな渦があり、その小さな渦の中には、更に小さな渦があると行った具合に連続しているのです。
この事が理論づけられたのは、ごく最近の事でした。複雑な形はこの理論によって初めて定義付けられたようです。
レオナルド・ダヴィンチは、そのことを知っていたのかどうか定かではありませんが、彼の描いたスケッチ画の中に、
この理論の背景になった渦の構造が細かく描写されているそうです。冒頭に紹介した番組の解説によりますと、
モナ・リザの背景には一見、人物画とは関係のないものが描かれているように見えるけれど、この背景画こそ、実は、
このフラクタルという宇宙の普遍性のようなものを早くから見抜いていて描き込んだのではないかというのです。
そう言えばあの川も、あの岩山も、あの湖もフラクタルと何らかの関係があるように思えてきます。あの人物からして
不思議な表情をしています。女性ではあるのですが男にも見えますし、笑っているように見える顔も視線を変えると
冷たい表情にも見えてきます。実に不思議な絵である事には違いありません。
フラクタル理論をもちいて絵を描くと実に自然に近いものが描けると言います。また、フラクタル理論を応用すると
皮膚癌の検診にも役に立つと言います。奥行きの深い理論のようです。あるいは生物の誕生の謎も遺伝子の構造も
フラクタル理論の中に隠されているかも知れません。
渦巻く水の流れや炎の先端を見ていますと、いつしか大宇宙の構造にまで想像は飛躍します。少なくとも銀河系
宇宙もアンドロメダ星雲も大きな渦巻きです。その中に太陽系のような存在が無数にあります。そうして更にミクロの
目で見ますと電子は陽子の周りを高速で回転しています。
すべてのものがくるくると回っているのです。そう言えば回転すると言う動きからして、フラクタルなのではない
でしょうか。「とんでとんで回って回って回るうう・・・・」という円ひろしさんの歌を思い出します。
2003年4月17日掲載
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