長く暑かった夏と、寒く厳しい冬との間に挟まれて、秋はほんの一時です。
秋は短くもその一瞬に、一年の締めくくりとして、素晴らしい輝きを見せてくれます。
短命であるだけに、その輝きは美しく、はかないものがあります。
全山が赤や黄色に彩られ、やがて枯れてゆきます。そして、たくさんの落ち葉は色あせ
土に帰ってゆきます。人間を取り巻く環境は変わっても、変わることなく繰り返されてきた、
これが自然の営みです。この大自然の営みの中に、人間のはかなさや哀れさを感じ、
喜びや悲しみとして多くの句が詠まれてきました。
私も俳句を習い初めて3年が経過しました。いっこうに上達はしませんが、自然の
移り変わる様を見る目だけは、少し養われて来たような気がします。
俳句「秋」編は、シリーズで書き始めたこのコーナーの総決算として編集しました。
つたない俳句ですがお読み下さい。感想など頂ければ幸いです。
もの作り 2001年1月17日
| 落葉踏む音軽やかに山路ゆく・ | 足下をバッタ跳び立ち跳びたちて・ |
| 照り曇りいる日も釣れて鯊日和 | 廃線となりしトンネル蔦もみじ・ |
| 菜を洗ふ背なに温き日小春かな・ | 讃岐富士間近にしたる野分晴・ |
| 奥の院目指す山道露の秋・ | 帰燕舞ふ高原の空明けてゆく・ |
| 雨音に風重なりぬ夜の野分・ | 思ひ出は鮠(はや)追ひし日々蓼(たで)の花・ |
| コスモスの色を映して水清し・ | 畑仕事連れて戻りし草いきれ・ |
| 青空をキャンバスにして秋桜・ | 雑草の伸びるにまかせ秋深む・ |
| 干拓や鯊釣る浜を遠くしぬ・ | 大根の切り売りも買ひ秋刀魚買ふ・ |
| 部屋深く日差し満ち来し今朝の秋・ | 新涼やレース編む手の軽やかに・ |
| 名月の夜のコンサート曲に酔ふ | 鍬洗ひ手足も洗ひて日の永し |
| 曼珠沙華朝の大空真青なる・ | 繕える母の背丸く枇杷の花・ |
| 大根の芽の出揃ひて秋日かな・ | 穂芒を染めて夕日の落ちにけり・ |
| 竜胆(りんどう)や大山遙かなる山に・ | 古本の桜紅葉の栞あり・ |
| 懸崖のいずれも蕾菊花展・ | 風抜けてゆく整地跡秋終る・ |
| 案の定秋日は山に落ちにけり | 紅葉よりモデルの服の赤さかな・ |
| 穂芒の雲にも似たる峠道・ | 鳥渡る母の日課の畑仕事・ |
| 名月を寝ころんで見る留守居かな・ | 球を追ふ高校球児の秋暑し・ |
| コスモスの揺るる吉備路の風やさし・ | 沿道の露店気になる七五三・ |
| 団栗に足をとられて宮参り・ | 濯ぎ物しまい忘れて秋の暮 |
| 装ひを変へてマネキン秋深し・ | 枝重きリンゴ日毎に色づきぬ・ |
| 井戸底に青空のあり水の澄む・ | わが街の名もなき山の黄葉かな・ |
| 秋日和園児の列の赤帽子・ | 柿をとる竿赤く染め西日落つ・ |
| 大前の茅の輪をくぐる長い列 | 釣り人の早や散りゆける初時雨・ |
| 涼しさの戻りし夕べ卓囲む | 狭庭にも明るさもどり石蕗の花・ |
| 影踏みをした日もありし月明かり・ | 道の駅目を引くものに蜜柑積み |
| 鯊釣りの竿の彼方の夕日かな・ | 夜の長く推理小説読みあかず |
| コスモスに埋もれて道の細くなり・ | 三人の思ひ思ひの夜長の灯・ |
| 芋売りの声よく通る秋日和・ | 賑やかな声がバスより秋遍路 |
| 一皿に乗らぬ長さの秋刀魚かな・ | 芒野を染めて夕日の赤々と |
| 風渡り松虫草の丘広し・ | 母よりの電話の中に鳴く地虫 |
| 裏山を大きく揺すり野分立つ | ふる里の山皆常磐紅葉かな |
| 秋遍路貸切バスを乗り継ぎて | 釣師等姿も見えず初時雨 |
| 岬宮の太鼓の音や夕月夜 | 冬紅葉波静かなる瀬戸の島 |
| 神木の真直ぐに伸びて天高し | 蜜柑狩昼月淡き島の空 |
| 萩の花こぼしてゆきし掘の風 | 放牛の群れなし食めり息白く |
| 奥の院目指す山道露の秋・ | 秋灯母もむ肩の細くなり |
| 山陰に日は傾きぬ芋洗う・ | 細りたる母の肩もむ秋灯下(先生の参考句) |
| 独り寝の部屋広々と星月夜・ | 大根蒔く日の近づける秋彼岸 |
| 柿の実の色付くほどにたわわなる | 次々と出てゆく舟や鯊日和(先生の句) |
| 秋高し沖にカモメの筆の海・ | 秋耕や雲に触れたる鍬の音 |
| 初物の松茸飯のある夕餉・ | 初林檎恥じらうような赤さかな |
| 松茸飯炊いて家族で香を分かつ(先生の参考句) | ほのかなる紅うひうひし初林檎(先生の参考句) |
| レンジでは便利で不便秋刀魚焼く | 鶏頭の狭庭に燃えて赤が好き |
| 刈込みのすみし垣根や小鳥来る | 枝豆や出来良き枝や悪き枝 |
| オリオンの中天にあり台風過 | 菜園の一汁一菜なる夕餉 |
| 酔ひ覚めて眠れぬ夜寒ありにけり | 爽涼や薄雲引きて讃岐富士 |
| 旅の宿長風呂となりし旅籠の十三夜 | 秋祭部落総出の大掃除 |
| 畑仕事終ふ空埋めて鰯雲 | 枯芝の日の燦々と昼の月・ |
| 新走枝豆一皿あれば足る | 明けやらぬ棚田棚田の冬霞 |
| 宿直の見回り終えし星月夜 | 二十四の瞳の校舎秋桜 |
| 秋の雨降られ続きの旅終る・ | 不便さも慣れれば楽し里の秋・ |
| 花の市店先飾る菊の鉢 | 寒霞渓山また山の照紅葉・ |
| 立読は学生ばかり秋日和 | 寒霞渓奇岩楽しむ秋の雲・ |
| 秋天や釣果を分ける場所探す | 四方指眼下の紅葉一望に |
| 秋晴や竹竿売りの声透る | 寒霞渓の蔦の紅葉の奇岩かな・ |
| 秋耕や昼を告げゐる妻の声 | 壁掛も紅葉に替へて客迎ふ・ |
| 渇水のダムを潤す秋出水・ | 一山に粧ひそめし由加の秋・ |
| 転勤の挨拶届く秋の声 | 小春日や箒片手に立ち話・ |
| 秋の海行き交う船や鳥渡る・ | 寒霞渓奇岩彩る紅葉かな・ |
| 秋日和蛸壺積んで船出ずる・ | 蒜山へ秋の一途にハイウエイ・ |
| 枯芝の足にやさしき園巡る・ | 水澄めり寄り添ひ漕げる川ボート・ |
| 心地よきリズムのありて落葉踏む | 水澄みて古江流るる眼鏡橋・ |
| 落葉踏む音心地よきリズムあり(先生の参考句) | 銀杏の落ちるにまかせ散歩道・ |
| 空を飛ぶ宇宙士の声秋高し・ | 新涼や旅の計画二つ三つ |
| 読み耽るベストセラーや夜長の灯・ | ダイバーの吐く息白く島の朝 |
| 一人釣る島の荒磯や鳥渡る | 見下ろせる湖面の落葉列なせり |
| 雑草に一歩踏み出す露けしや | 太き肩見せ大根の頼もしく |
| 足早に稜線から秋降りて来し(松野町投句ポスト佳作) | 紫の菊咲き残り廃線跡 |
| 滑床の夜に抱かれ秋深む(同上) | 秋雨の音聞き眠る旅の宿・ |
| カクテルの素材となりて青き柚 | ジャムを煮る甘き香りや今朝の秋 |
| 晩秋の夜空を飾る流星ショー・ | あと一と日なる連休や法師蝉・ |
| 二十四の瞳の岬の秋桜・ | 祭笛夜々の稽古の裏通り・ |
| 白き嶺々かすかに残り暮迅し | 嫁ぐ娘の日取り決まりて家の秋 |
| 枝豆の山のいつしか殻となり・ | 恙なきことが幸せ鳳仙花・ |
| 錦鯉群れる掘割萩の風 | 狭庭にも金木犀の朝の来て |
| せせらぎを聞きつつ秘湯夕月夜 | 無花果の高枝蜂の離れざり・ |
| 工場の片隅にある萩の風 | 秋茄子空の青さを確かにす・ |
| 竜胆の尾根渡る風人の列 | 収穫の喜び盛りて栗御飯 |
| コスモスの景の中なる野川かな・ | 只ぐみと云へばあきぐみなりしかな 先生参考句 |
| 峡の宿有明月を窓に置き・ | 秋ぐみの名前いくつもありにけり |
| ロダン像朝日に映えて蔦紅葉・ | . |
| 代官所跡の車井石蕗の花・ | . |
| この街は旅人多し菊花展・ | . |
| 糸垂るる一人に過ぎし初時雨・ | . |
| 風渡る干拓平野豊の秋 | . |
| 曼珠沙華さほどに遅速のなかりけり・ | . |
| 桜貝拾いし浜の夏終わる | . |
| 食卓の花一輪の秋桜 | . |
| 裏路地の風の抜けゆく夕月夜 | . |
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