-若い力を生かせる企業に- 昨年から今年にかけて景気は一進一退を続けている。そんな状況下で高卒者も学卒者もかつてない就職難の中にある。
就職が決まるまでには試験を受けたり何回も面接を受けたりしなくてはならず、それでも決まれば結構な話だが
結局縁がありませんでしたで片付けられるケースも少なくない。学生達は靴をすり減らすようにして少しでも理想の
会社を選ぼうと必死になっている。採用する側にもそれなりの理由はあるのだろうが、二次、三次まで面接をして
ふるい落とすような権利が企業側にあるのだろうか。ダメなものは最初からダメなことは分かっているのではないだろうか。
口ではファイトある人間だとか、成績よりはやる気のある人間をといいながら現実には従来と変わらない選定に
終始しているように思えてならない。企業にとっては買い手市場だから、この際少しでも優秀な人材を確保したいという
気持ちは分からないでもないが、それにも限度というものがある。ましてや学校の出来が良いだけでこれからの
厳しい国際競争の中で生き残っていけるのだろうか。学校の成績だけではどうにもならないことは、現在会社の中で
働いているお互いの状況を見れば良くわかるはずだ。ましてやバブルの崩壊を目の当たりにしてきた我々は優秀だと
もてはやされてきた人達がどんなことをしてきて、自分たちが招いた危機的状況の中で何をしてきたのか。何の対策
も打てずただうろうろしてきただけではないだろうか。そんな人材が大手の企業の中で優秀だと言われてきた人達だ。
一流の大学を出て、トップクラスで頂点を極めた人達が作り出してきたのがバブルの虚構だったのではないだろうか。
これからの時代を背負って立つ若い人達には、今までとは違う人物像を期待したい。
これからの世の中は大きな変革を迫られている。価値観も今までとは異なる世界観が求められている。アメリカの尻
を追うだけではなく、独創的な何かでなくては、この危機的状況は抜け出せないであろうし、世界のトップとしてリーダ
ーシップを取っていくことは不可能であろう。
アメリカのバブルも近い内に崩壊するだろう。その時に巻き添えを食わないような心構えが必要だ。私達は幸いにも
早い時期に成金主義の愚かさや、もろさを体験してきた。今となっては良い体験をしてきたといえる。この苦い体験を
再び繰り返さないために新しい価値観を生み出さなければならない。そのためにも若い人達に対する見方を変えて
いかなければならない。
企業の中での人材の用い方や生かし方を考えていかなければならない。形ばかりのその芽は出始めているようにも
見えるが、今年の採用状況等を見ているととても本物とは思えない。
先日のTBSの報道特集を見られた方も多いと思うが、ここで紹介された青年の場合がそのことを雄弁に物語っている。
青年は自分のファイトを生かしたかった。そのために面接においても大いにそのことをアピールしたし、ひたすら前向き
であり続けた。しかし青年が目指した大手の会社は、少なくとも青年の送るメッセージを真摯に受け止めようとはしなかった。
受け止めようとしなかったのか、あるいは受け止められるほどの土壌もなかったのだろうか。結局青年の夢はかなえ
られないままベンチャー企業へと向くことになるのだが、本当にこれで良いのだろうか。
今もなを過去の栄光を背に負にしたまま少しも変革を試みようとしない企業と、青年達のひたむきに将来を見据えた
澄んだ目とが一致していないように見える。
恐らくは大手企業に決まった若者達も期待とはあまりにかけ離れた現実にがっかりすることだろう。
これからは金だけの時代ではなく、人が中心の時代としたい。人の価値が尊重され、人のための日本であり世界で
ありたいと思っている。そのためには企業は利益だけを追求するのではなく、利益は広く社会や従業員に行き渡るもの
でなくてはいけない。儲けのためになら何をやっても良いというのではダメだ。企業は公人として社会に責任を持ち
厳しい自己規制の中で行動をしなくてはいけない。儲けたら還元をする。その中から自然循環型の経済が生まれて
くるのであって、それこそが人間のための生きた経済といえるのではないだろうか。
そういったホットな企業を作っていけるような人間性のあふれた明るい前向きなファイトある青年達に将来を期待したい。
また、企業はそういった青年達を受け入れることが出来るように自らの体質を変えていかなければならない。
2000年1月28日
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