ホタル

長い間、近くて遠い国と言われてきたお隣の国韓国。しかし、今回の共同開催国としてのワールドカップは大成功だった
のではないでしょうか。
先日も日本がトルコに負けた試合の日の晩に韓国ではイタリアと韓国の試合がありました。その試合に韓国料理店では
店を解放してサーカーファンの観戦場を作ったそうです。その場には韓国系の若者や日本人の若者が一緒になって韓国
チームに声援を送ったと報じられていました。
かつてこんな事があったでしょうか。日本人は韓国人を敬遠し、朝鮮の人達は誇り高い民族ですから、先輩達が受けた
屈辱を絶対に忘れないと言う、かたくなな態度を崩しませんでした。
しかし、ワールドカップは対立を和解に向けて大きく前進させました。恐らく若者間の交流は、何のわだかまりもなく今後
に引き継がれて行くのではないでしょうか。
以前、高倉建さんと田中裕子さん主演で「ホタル」という映画が上映され話題を集めました。特攻隊の重い影を引き
ずって生きてきた人達を描いた映画でした。この中に韓国にふる里を持つ青年将校金山少尉がいました。高倉健さん
演ずる山岡や若い特攻隊員達の上官です。彼らは上官である金山少尉が実は国籍の異なる朝鮮の人だと知って驚き
ます。金山少尉自身も隷属させられた日本の為に死地に赴くことに疑問を抱きながらも特攻機に乗って飛び立ちます。
戦争が終わり運命は大きく歯車を軋ませながら回転していきます。金山少尉の恋人だった田中裕子演ずる知子と山岡は
結ばれ漁師の夫婦として慎ましやかな生活を営んでいます。そんなある日、富屋食堂のおかみさん山本富子(知覧の母
として隊員達に親しまれた)に金山少尉の遺品を彼の故郷に届けて欲しいと頼まれます。そして、知子は金山少尉の
元恋人として、山岡は部下の特攻隊員として韓国を訪ねます。そこには少なくなった日本の田舎の風景が色濃く残り、
同族意識の強い韓国の人達が大勢で迎えます。少尉が残した遺品を手渡そうとするのですが、親族の中には絶対に
日本や日本人を許す事の出来ない人達がいます。しかし、容易に解けそうにもなかった戦前の日本に対する憎しみや
わだかまりは、はるばる訪ねて来てくれた二人の思いが伝わり、いつしか解けてゆきます。
朝鮮併合と称して朝鮮を植民地化し、長く隷属させてきた罪は重くのしかかります。隷属させた側では簡単に忘れられる
事でも、隷属させられた側にとってはなかなか忘れられません。朝鮮から多くの人達が連れて来られ強制労働に就かされ
ました。朝鮮人は自らの姓を日本名に変えさせられました。朝鮮の女性は従軍慰安婦として戦地に連れて行かれ日本兵
の性の道具にさせられました。
こんな罪深いことの数々を乗り越えて、ワールドカップの共同開催国という機会を通じて大きく和解に向けた第一歩が
印されようとしています。今、この世界で一番近い国、一番理解し合える国は韓国をおいて他にはないと確信をして
います。朝鮮の人達も二世三世と世代を重ねこの日本で生まれ、この日本で生活をしています。弥生時代を考えれば
朝鮮半島から私達の多くの祖先が海を越えて渡ってきたことは紛れもない事実です。血は一つなのです。お互いに
和解できないことはないのです。戦前の誤った政策と考えを反省しつつ、今後の両国の交流発展を心から祈って
います。
2002年7月11日掲載
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