井戸を見直そう

私の家には古い井戸があります。この井戸はおじいさんの代に掘ったものだそうです。深さは十数メートル
でしょうか。あまり深くはありません。おじいさんが元気だった頃は、この井戸を使っていました。その後、
水道が引かれるようになってから、この井戸を使う事はなくなってしまいました。そして、この井戸を作らせた
おじいさんも亡くなってしまいました。井戸が出来た当時は水位がもっと高かったそうです。本来の水脈以外
にも水位を高くする要因があったのかも知れません。その当時と異なる条件と言えば、この周辺から水田が
消えてしまった事です。この山間の狭い土地にも大小の水田がたくさんあったようです。今は大半が畑になり
住宅地になってしまいました。タデの尾や と言った池も使われなくなり、私がこちらに住むようになった頃
には細々と流れていた水路も壊れてしまいました。
こうして水源となるべきものが次第に失われていったのです。それでもこの井戸は枯れることがありません
でした。あの大干ばつに近いような夏でも枯れることなく畑の水やりに使いました。この井戸はおじいさんが
亡くなり、公共水道が引かれた後はしばらくの間、水をかい出されることなく放っておかれました。あまりにも
もったいないことと、夏の冷たい水にあこがれて井戸の再使用を思い立ったのです。早速、保健所に水質
検査に出してみました。検査結果は×でした。大腸菌が検出されたのです。見た目にはきれいな水であって
も周辺から色んなものが流れ込んだり、たまったままの水には細菌が繁殖するようです。
そんなわけで飲み水としては使えませんでした。仕方がないので畑の散水用に使うことにしました。こうして
約一年間水を使い続けました。その結果、井戸の水は入れ替わり、再度検査に出したときにはOKでした。
水質は申し分ないものだったのです。その後、倉敷市が特定物質の検出を無料で行ってくれました。その際
にもそう言った薬物は検出されませんでした。
今はおばあさんおばあさんが亡くなってからは家内の母が引き続きこの井戸を使っています。井戸ポンプの
設置や配管の敷設はすべて私が行いました。何度か原因不明のトラブルで使ってもいないのに井戸ポンプが
運転のままだった事もありましたが、それ以外はまったく順調に動いています。生活用水だけでなく、畑の散水
にも使っており大変重宝しています。
確かに一時期、汚水が地下水に染みこんで井戸水を汚すような事がありました。それが伝染病の元になると
して急速に公共水道が普及したのですが、それでも井戸水には井戸水の良さがあります。ましてや大地震など
で水道管が破損したときなどは給水だけではとても事足りません。そんな時、井戸は大いに役立つはずです。
世界的に水不足が心配されています。日本の地下水は細菌による汚染さえなければ非常に水質は良いと言
われています。こんな良いものを利用せずに置いておくのはもったいない話です。もう一度我が家の古井戸を
見直してみたらどうでしょうか。
2003年11月23日掲載
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