昆虫採集

今は夏休みです。そして、夏の思い出と言えば昆虫採集です。私達の子供の頃は、今と比較すると全てにおいて
自然が豊かでした。特に夏休み期間中は昆虫の種類も数も多く、蝉やトンボを追いかけ回していました。昆虫の
王様は何と言ってもカブトムシでした。そして、クワガタムシでした。これらは樹液の出るドングリの木に群がって
いました。どういう事がきっかけで虫の好む樹液が出始めるのか分かりませんが、山に行くと必ずそんな木が何本
かありました。樹液の周辺にはカブトムシ、カナブン、大スズメバチ、茶色の羽根の蝶々等が群がっていました。
クワガタムシは夜行性なのか、明るい時にはほとんど姿を見せませんでした。
みんながカブトムシの来る場所を知っていて、早朝、我先にとその場所に向かいます。夏の夜明けは早いとは
言いながら、早朝はまだ薄暗く、そんな場所は大抵木が鬱そうと茂っている山の中なのです。朝露を踏みながら、
マムシがいないか、おっかなびっくりでその場所に近づきます。小さい頃は、たいてい他のものに先を越される事
が多かったのですが、六年生頃になるとそんな事も少なくなりました。樹液の酸っぱい匂いをかぎながら、一匹ずつ、
つかんでは虫籠の中に入れます。わくわくする瞬間です。一方、カブトムシは樹液を吸う事に霧中になっています。
逃げようともしません。カブトムシは力が強く、その上、羽根が固くて滑りやすくつかみにくいのです。うっかりすると
角に挟まれてしまいます。何度か痛い思いをしたことを思い出します。
カブトムシはオガクズや腐った木の中に卵を産みます。卵は幼虫になり、幼虫はオガクズの腐ったものや木の腐った
ものを餌にして成長します。何齢かの脱皮の後、繭のような穴を作ってサナギになります。サナギはそれまでの白い色
ではなく、成虫に近い茶色をしています。そして脱皮の後、穴からはい出してきます。はい出してきた成虫はすでに
羽根も固く、色もより黒々として逞しくなっています。
友達の家の風呂炊きに使うオガクズの中にたくさんのカブトムシがいました。誘われて見に行きました。その内の
一匹だけを貰って帰りました。餌が豊富な場所だったからか大きなカブトムシでした。友人を羨ましく思ったものです。
と共にカブトムシはこんなところに卵を産むのかと思いました。
家の子供達が幼かった頃、私の幼少の頃の経験が生かされました。子供達の喜ぶ顔が見たくて、まだ薄暗い内
から起きて、近くの山にカブトムシを探しに出かけました。こんな近くの山にも結構いるものです。あちらこちらの
木から何匹ものカブトムシを捕まえました。腐葉土を底に敷いたプラスチック製の虫かごの中に入れておきました。
すると腐葉土の中に小さな白い卵が生み付けられていました。初めて見たカブトムシの卵でした。これが、やがて
小さな虫になり、サナギになって成虫になるのです。
果たして、子供達はこの頃の事を覚えているでしょうか。何度か山にも連れて行きましたが、子供達だけで捕りに
行った事はなかったようです。子供達から虫取りについての思い出話を聞いた事がありません。そんな訳で、私達
の子供時代のような懐かしい思い出となって残る事はなかったのかも知れません。
クワガタムシは何年も生きているそうですが、カブトムシの寿命は短いようです。たくさん飼っていても次々に死んで
しまいます。カブトムシの短い生涯は、一夏のほんのわずかの期間で終わってしまうのです。
2003年8月3日掲載
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