さより釣り2003


浜辺にて
先日は思いがけず元気な子供達の姿を見かけたので書き残しておきます。その前に少しだけ自分の事を
書いてみたいと思っています。今年はいくらか精神的、時間的なゆとりが出来ました。そんなわけで魚釣りを
再開しました。今のところサヨリ釣り専門です。十一月初めまでに、四回行きました。楽しみが増えたせいか、
お陰で気分転換が図れるようになりました。精神的にも追いつめられることがなくなり、心の余裕が出来た
ような気がします。
先日も会社の帰りに以前鯊釣りをした事のある海岸に行ってみました。秋の日は釣瓶落としと言いますが
夕方も5時過ぎると急速に薄暗くなり始めます。そんな海縁にお年寄り達が数人集まって話をしていました。
どうやら釣りの話のようでした。そして、防波堤の先には男の子達が数人釣りをしていました。竿先も十分
確認出来ないほど周辺は薄暗くなっていました。小学校の3、4年生くらいでしょうか。中には私達が少年の
頃のように丸刈りの男の子もいました。日中は少し暑い位でしたが、夕方になって急に気温が下がり始めま
した。そんな気温なのにランニングシャツ一枚の男の子もいました。元気な男の子達でした。みんな一本ずつ
リールの付いた竿を持っていました。釣果を尋ねてみますと、ふぐと鯊だとの事でした。その時、遠くから午後
5時を知らせる放送が聞こえてきました。男の子の一人がこんなことを言いました。「ラッキー、まだ十五分
あるがー」。家に帰りなさいと言われている時間まで、まだ十五分もあるという事なのではないでしょうか。
今時の子供達は外で遊ぶ事もなく、ましてや、暗くなっても「まだ遊ぶ時間がある」と言って喜ぶような子供
がいったいどれくらいいるでしょうか。思いがけなく子供達のほほえましい姿を見、その上、遊ぶのが楽しくて
暗くなっても帰りたくない様子等、私達の子供の頃と同じような彼らにすっかり感動してしまい、思わず微笑み
が浮かびました。私は、彼らの姿の中に私達の幼かった頃をかさね合わせて眺めていました。
沖の方では小さな灯台やブイの明かり点り始めました。もうすっかり周辺は暗くなってしまいました。それでも
男の子達は喜々として釣りに夢中でした。浜辺では相変わらずお年寄り達が釣りの話しをしていました。何か
五十年近く以前にタイムスリップしたような感じさえする浜辺の情景でした。
さて、話を釣りの方に戻しましょう。釣りをする人にも色んな人がいます。しかし、記憶の多くは苦い思い出
ばかりです。釣りをする人の中には、とかく縄張り意識の強い人が多いようです。あるいは私もその一人かも
知れません。しかし、露骨にいやな顔をされ、乱暴な言葉を浴びせられると、誰しも腹が立ちます。
10月11日(土)大潮
下津井の祇園さん下の堤防は、いつも大勢の釣り人で賑わっています。私が行った日も既に先客がたくさん
いました。それでも一人二人は割り込めそうな余裕が十分ありました。その一角に入らせて貰おうと、その近くで
釣っている年輩の人に挨拶をしました。すると、その人が言うには「わしもここへやっと入れて貰ったんじゃあ、
隣の若い人に聞いてみねえ」。その言葉と態度からは、明らかに入れたくないという思いが読みとれました。
私もいささか意地になり、その人が言う右隣の若い人達に尋ねてみました。あっけないほど「どうぞ」という答え
でした。
その後も、その人はいかにも釣りには詳しいのだとばかりに、大声を出して他の仲間に話しかけていました。
そんな事を言っている割には釣れていません。その内に、右に行ったり左に行ったりし始めました。それでも
釣れているようには見えませんでした。私は出来るだけ顔を合わせないようにしていました。すくなからず、
いらいらしているようでしたので、どんな難癖を付けられるか分からなかったからです。
そうして昼近くになり右隣の若いカップルは帰っていきました。結構たくさん釣っていたようでした。すると先程
の人はその場所に移動してきました。それでも釣れません。また、元の場所に戻りました。私の後ろを何度も
行ったり来たりしていたようです。
するとバイクに乗ったおじさんが来ました。おじさんは頼みずらそうに、ここへ入らせて貰っても良いかと尋ね
ました。元よりここは自分だけの場所ではありませんし、誰もいない場所でしたから、どうぞどうぞと入れてあげ
ました。おじさんは喜んで何故ここに来たのか話し始め、ここでいつも釣っている事や、どの潮が良くてどの潮の
時はどの辺に移動すれば良いのだという事を親切に教えてくれました。
こころよく入れてあげたのが余程うれしかったのでしょうか、何度もお礼を言っていました。さすがに毎日来て
いると言うだけに次々に釣り上げます。実に巧みな釣りでした。この人の釣りは見釣りという釣り方でした。
つまり防波堤にへばりつくように体を低くして、サヨリが餌を口に入れるのを確認するとすぐ竿を引き上げる
ような釣り方でした。持っている竿も足下を釣るために短い竿でした。私の釣り方は、例え餌が見えたとしても、
あくまで浮きが沈むのを見て竿を引き上げるという釣り方です。この釣り方ですと、すれたサヨリは餌を口に
含み、なめるように餌だけを取って針だけを吐き出すのです。従って、百発百中という訳にはいきません。
釣果を問わなければ私の釣り方の方が格好良いと思うのですが如何でしょうか。
さて、二人のおじさん達、何から何まで誠に対照的でした。本格的に腰を据えた釣り上手なおじさんに挨拶を
して防波堤を後にしました。釣りをしていると色んな人に出会うものです。
10月19日(日)小潮
こんな事があって、祇園さんの下での釣りはやめました。そして次からは島に渡る事にしました。10月19日、
久々に羽佐島に渡りました。チヌを釣る人が一人と、通し(夜通し釣ること)で釣っているという投げ釣りの人が
一人いました。その他には、この島の主である猫が一匹でした。通しの人は私が釣り初めてからしばらくして
帰っていきました。チヌを釣る人は船着き場のすぐ側でした。私は瀬戸大橋の橋脚の真下に陣取りました。
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釣り場所は橋脚の真下当たり(上は瀬戸大橋線や高速道路が走っている) 海岸近くには、すでにたくさんのサヨリが寄っていました。撒き餌無しでも釣れるような数です。竿を出す準備も
もどかしく餌を付け海に下ろしました。下ろすと間もなく一匹が掛かりました。こうして潮の干満にはほとんど関係
なく昼過ぎまで釣る事が出来ました。まだ十分に成長はしていませんでしたが、面白いほどたくさん釣れました。
防波堤ですから釣りやすく、針からはずれても海に逃げてしまうような事はありません。ただ気を付けなければ
ならないのは、ここの主である野良猫が常にこちらを狙っていることです。針からはずれた魚を狙っているの
です。
この日は、私自身の不手際で糸をもつらせたりしなければ、もっとリズム良くたくさん釣れたはずです。しかし、
迎えの船が来る午後三時近くまで釣っていました。さすがに午後になると潮の流れがなくなったせいもあってか、
午前中ほどサヨリの姿が見えなくなってしまいました。やはり潮の満ち干と密接な関係があるようです。
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釣り場所から西と東を眺めたところ 左の写真は与島の西側、真ん中は羽佐島の岸壁西側、左の写真は羽佐島の岸壁東側 前回はあまりにも小さすぎたので、その一週間後(10月25日)同じ羽佐島に渡りました。この日は鯊釣りに
しようかサヨリにしようか前日から迷っていました。鯊(はぜ)がどこで釣れるのか知らなかったからです。以前、
通生の海岸で釣れるという話は聞いたことがありました。しかし、ずいぶん以前の話でした。釣具屋に行けば
情報が聞けるだろうと、いつも行く釣具屋に餌を買いに立ち寄りました。店の主人に聞くと、この辺での鯊釣り
は聞いたことがないとの事でした。「そりゃ、サヨリの方がええんじゃないん」との一言で、急遽、サヨリ釣りに
決定しました。
10月25日(土)大潮
三宅渡船で羽佐島を目指しました。再挑戦でした。この日も良い天気で、少し厚着をしてきたのですがすぐに
脱いでしまいました。やはり前回同様、水面近くまでサヨリは浮いていました。サヨリが浮いている時には、水面
にもさざ波のようなものが見えます。これはたくさんいる証拠です。
早速、竿を出し第一投です。針先が水に浸かると間もなく浮きが沈みました。竿を上げると前回よりは手応えが
ありました。ほんの一週間の事ですがサヨリは一回り大きくなっていました。こうして、この日も休みなく釣れました。
撒き餌の必要はなさそうでした。撒き餌をすれば食いつきが良くなるのですが、その必要がないくらい素直に食ら
いついてくれるのでした。お昼近くになって潮の流れがゆるみ始めた頃から、一回り大きなサヨリが釣れ始めま
した。(俗に言う秋刀魚のような大きさのものでした。実際は秋刀魚より一回り以上小さいのですが、仲間内では
そう表現しています)釣れるのは堤防から少し離れたほぼ同じ場所でした。どうも大きなサヨリが混じった集団の
ようでした。逆光で水面が光り群の姿は見えませんでした。結局、この日は、この手の大きさのものが十数匹
釣れました。そして大漁でした。その内、潮の流れが早くなり風も出てきました。サヨリの姿はほとんど見えなく
なりました。それでも竿さえ出しておけば釣れましたが、午前中のような事はありませんでした。
迎えの船を待つ間、潮の流れがない船着き場のところまで来ると薄日の中でサヨリの群が横切っていくのが
見えました。その中に先ほど釣った大きなサヨリが何匹も混じっていました。ここは流れもなく、風もなく釣り易い
場所のようでした。今度、機会があったら、ここでも釣ってみたいと思っています。
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渡船の乗り降りをする岸壁の東の端から上を眺めたところ 11月3日(月)長潮
そして更に一週間後、11月3日に羽佐島に渡りました。この日は午後から天気が良くなるという予報だった
からです。しかし、明るくなってきてもいっこうに晴れてきそうにありませんでした。小さな霧のような雨が降って
いました。竿を出してみましたがサヨリの姿はまったく見あたりません。あれほどの群はどこに行ったのでしょうか。
仕方がないのでサビキ釣りをしようかと思い、リール竿を取り出したところ先が折れていました。何もかもついて
いませんでした。こんな日もあるのです。その内、大粒の雨が降り始めました。大急ぎで橋脚の下に避難しました。
雨だけは避けることが出来ました。しかし、これ以上待ってもサヨリの寄ってくる様子もなく、雨も止みそうにあり
ませんでしたので潔く諦めることにしました。
後で知った事ですが、お天気が悪かったばかりでなく潮も最悪だったのです。小潮の最後、長潮だったのです。
渡船の人も話していましたが、もともと潮の流れが緩いところでは小潮はダメだそうです。それも長潮となると
最悪だと言うことになります。良い経験をしました。
2003年11月27日掲載
羽佐島から帰る途中の瀬戸大橋(斜張橋) 羽佐島の地理
瀬戸大橋は下津井側から櫃石島、岩黒島、羽佐島、与島、坂出となっています。従って羽佐島は瀬戸大橋の
橋脚となった島なのです。四つの島の中で、この島だけが無人島です。しかし、人の住まぬこの島に何故猫が
いるのも不思議なことです。
私が釣りに行く羽佐島は、狭い海峡を挟んで与島と向かい合っています。与島は観光の島であり、パーキング
エリアもあって観光客で賑わっています。
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羽佐島の向かいの島 与島、西から順番に東側まで
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