つい最近起きたロシアの原潜事故は、その後の報道がないまま今日に至っています。事故発生直後、ロシアには
緊急時の対策も、救出のための十分な設備も持っておらず、多くの隊員を犠牲にしてしまいました。事故原因の見解
も二転三転し、事故対応のまずさを露呈してしまいした。結局、他国の援助の中で、遅れに遅れて潜水艦にたどり
着いた時には、潜水艦の中は壊滅状態に近く、生存者の確認は出来ませんでした。
原潜が沈んでいる海は比較的浅いところだと言われております。従って、犠牲者の救出は出来なかったとは言え、
原子炉を積んだままの、この潜水艦を放っておくわけにはいかないようです。
そして、気になるのは潜水艦に積んでいる原子炉がどのような状態にあるのかと言うことです。運転は確実に停止し
ているのか、原子炉からの放射能の流出はないのかと言うことです。イギリスはいち早く原潜引き上げのための資金
援助を申し入れています。今のロシアの経済力だけでは、とても引き上げることは困難なようですから、資金援助
だけでなく技術協力も含めて国際的な支援が必要なようです。
それにしても恐ろしいのは、この手の事故が今後も頻発する事です。旧ソ連時代の巨大な軍事力を維持している
ロシアとしては莫大な軍事費が必要であると思われます。しかし、今のロシアにそのような経済力があるとは思えません。
従って、手入れの行き届かない兵器がたくさんあるはずです。中にはミサイルもあるでしょう。これらが今回の事故の
ように暴発しないと言う保証はどこにもありません。ましてや原子力という計り知れないエネルギーを秘めた兵器です。
原子力潜水艦や原子力空母などは原子炉を積んで走るという危険と背中合わせの兵器です。
同じ事はアメリカにも言えます。アメリカも多くの原潜を海底に潜ませています。その他、空母や軍艦もあります。
戦争になれば互いに向かい合って戦う兵器です。爆破されることも撃沈させられることもあるでしょう。
事故による自爆もないとは言えません。その際にはおびただしい死の灰が周辺に拡散し、海を汚すのです。
その汚染は原油の流出とは比較にならないくらいの深刻な影響をもたらすはずです。生態系にも間違いなく大きな
傷跡を残します。今回の原潜事故を契機に、アメリカもソ連も全兵器の撤廃は夢としても、少なくとも原子力を
エネルギーにして走る兵器と、原爆や水爆は全面撤廃へ持っていくべきだと思うのです。
今回の原潜事故は全くの偶然により全面破壊には至りませんでした。しかし、爆薬を満載している兵器ですから
全面破壊があっても不思議ではありません。今回の事故を神が与えた警告として受け止めたいのです。
余談になりますが、ロシア国内には原爆開発時代の事故によるものや、原潜等から排出される放射能廃棄物などが
野積み状態で放置されているとも聞きます。日本の国内でも原発から吐き出される放射性廃棄物の処分が今、
大きな問題となって横たわっています。ドイツはつい最近、原発の全面撤廃に踏み切りました。北欧諸国でも旧ソ連
時代のチェルノブイリ事故以来、急速に原子力発電に対する危険認識が高まり、相次いで撤廃の方向に進みました。
原発から受ける恩恵よりは負の遺産の方が大きいと考えているのです。日本においても今後、真剣に考えていかな
ければならない問題だと思います。
なお、恐ろしいのはロシアが今後ますます政治的混乱が大きくなることです。政治的混乱は経済力にも影響を及ぼします。
経済力が低下すればするほど、国内の混乱は増し、今回のような事故の危険性は高まることになります。
もし、原爆のような兵器が国際テロリスト等に渡ってしまったら、それこそ取り返しのつかない事になるのです。
危険は日々高まっているような気がしてなりません。
2000年10月25日
|
|
|
|