南北朝鮮を隔てる38度線に流れる川、この川に住む魚にシュリという魚がいるという。
緊張緩和の兆しがあるとは言え、南北朝鮮は依然対立関係にある。
表面では穏やかに見える両国だが、水面下では激しい諜報活動が行われている。
何度か大きく報道されたような事件も少なくない。かつて東南アジアで多くの死傷者を出し
テロ活動で逮捕された女性スパイ「金賢姫」も北朝鮮のスパイであった。彼女も北朝鮮国内で
厳しいスパイ養成の訓練を受けて国外に送り出された一人である。日本国内にも何度か
訪れた事があるという。正に世界を股に掛けたスパイだったのである。
こんな彼らの世界を映画化したのが、韓国内で大ヒットした「シュリ」と言う題名の映画である。
この映画は韓国内に於いては、世界を席巻して感動の渦に巻き込んでいたアメリカ映画
「タイタニック」の集客力を上回る大ヒット作になったと言うから、その人気のすごさ分かる。
スパイ合戦をテーマにした映画であるから、アメリカ映画顔負けの銃撃戦がある。
激しいテロ活動による爆発シーン、その中に描かれた様々な人間ドラマ。観客を沸かす全ての
要素が揃っている。ヒロインは北朝鮮のスパイ、ヒーローは韓国の諜報部員、この男女二人の
恋愛を軸に映画は展開する。結ばれようとしても結ばれることの出来ない南北の壁の厚さ、
これは両国の未だ解決し得ぬ問題の大きさを表している。
そうして、両国が緊張緩和の中にあればあるほど、それを望まぬ人々も多い。
政治上での緊張緩和と緊張を背景に拡大してきた軍隊との考え方の隔たりは大きい。
両国の政界の要人を抹殺して、自らが理想とする統一朝鮮を作るのだと考える北朝鮮の
過激なスパイ達、彼らの行動を阻止しようと躍起になる韓国諜報部、最後は激しい撃ち合いと
爆破シーンの中で再び向かい合う事になった愛し合う二人。女性スパイは実らぬ恋を胸に、
自らの命を絶っていくという悲しい結末へと続く。
韓国の若者達にとっては人事ではない現実味を帯びた映画として、感動を呼んだのではないだろうか。
出来映えも最高の映画と言えよう。アメリカ映画をしのぐようなアクションと、スリルにわくわくするような
感動を覚えながらみた大変見応えのある映画である。
2000年12月16日掲載
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