
獲る漁業から育てる漁業へ
瀬戸内海の漁は先細りだと言われています。確かに近隣の漁港では年を追う毎に漁獲高が減っているようです。私達の
ように趣味で釣りをしているものにとっては残念でなりません。最近では、せっかく休みをとって島に渡っても坊主で帰る
という日も少なくないからです。それでも遊びは遊びです。又来れば良いのです。しかし、専業の漁師だったらそうは
いきません。日々の生活がかかっているからです。
こんな厳しい状況の中でも専業の漁師として立派に成り立っているところがあります。大分県にある漁師町です。
ここでは先祖代々、魚の種類によって漁期を定め、その掟に従って漁をしているというのです。要するに資源保護を
しながら家業を大切に受け継いでいるというのです。多くの漁師が本業をあきらめて他に職を求めている時代にあって、
実に珍しいことです。
如何に海のものとは言え資源は有限です。昔の一本釣りとは異なり、機動力に富んだ漁船や仕掛けは魚を根こそぎに
してしまいます。それが一艘だけならいざ知らず、何艘もの船が同じ海域にひしめき合うとなると、結果は火を見るより
明らかです。たちまち漁業資源は底をついてしまいます。
瀬戸内海でも下津井沖は日本でも有数の漁獲高を誇る海域でした。春には鯛や鰆と言った高級魚がたくさん捕れた
ところです。ところが近年鰆が全く獲れなくなってしまったのです。原因は色々言われていますが良く分かっていません。
鯛は早くから幻の魚になってしまいました。魚島と言われた季節になっても魚が獲れないのです。底ものの高級魚と
言われている赤メバルもすっかり獲れなくなってしまいました。私が独身だった頃、釣り船で沖に出て、ほんのわずかな
時間にバケツ一杯が釣れたというのは幻のようになってしまいました。いわゆる入れ食い状態だったのです。それは
メバルに限ったことではありませんでした。
強力な底引き網は海底を削りながら底ものの魚を根こそぎ獲っていきます。それは天に向かって自ら唾を吐くような
ものなのです。大分の漁民のように何故賢く慎ましやかに漁業を続けることが出来ないのでしょうか。豊かな海は、
この海が存在する限り豊かな恵を与えてくれる海なのです。いま、獲る漁業から育てる漁業への転換が求められて
います。現に今でも観光釣り船を経営している人の中には自ら沈めた魚礁に魚を根付かせ、そこを拠点にお客さんを
遊ばせているそうです。やれば簡単に出来ることなのではないでしょうか。
2002年5月19日掲載
このページのキーワード
・鯛、鰆(サワラ)、メバル
・底引き網
・魚島
・資源保護
・獲る漁業から育てる漁業
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