昨年のサヨリ釣り(海の変化)

つい先頃届いた年賀状にも「昨年(2001年)のサヨリはだめでした」と書いてありました。十年一日の如く変わらないと
思っていたものが最近になってどんどん変化してきているようです。釣りを初めてもう十数年近くになります。変化しない
ものの代表のように考えていた瀬戸内海が少しずつ変化をしてきているように感じています。それも一昨年よりは昨年、
昨年よりは今年と、年を追う毎に、その変化の度合いは早くなっているような気がしてなりません。
原因はいったい何なのでしょうか。海も自然の一部です。一部と言うよりは自然の主要な部分を占めていると言っても
過言ではないでしょう。一昨年の暮れ、山口に釣りに行った時、この時期でもまだギザミが釣れるのだと船頭さんが言って
いました。その言葉通りでメバルを釣りに行ったのにメバルが釣れずギザミばかりがかかってくるのです。海水の温度が
なかなか下がらないのだと言っていました。従って、夏の魚であるギザミがたくさんいるのだと言っていました。その他、
釣り上げた魚の中には熱帯魚のような魚も混ざっていました。
間違いなく海は変化をしているようです。これは地球の温暖化現象と不可分ではないようです。冬でも冬らしくなくて、夏は
異常な程の暑さです。特に昨年の夏はひどい暑さでした。連日30℃を超えるような暑い日が何日続いた事でしょうか。秋に
なり私はシーズンを待ちかねるようにして、10月中旬、大潮の日にサヨリを釣りに行きました。釣り餌を買いに立ち寄った
釣具屋の親父さんが今年はハマチが瀬戸内海に入ってきてサヨリを追いかけ回しとるらしいと教えてくれました。渡船の
おじさんも同じ事を言っていました。島に渡る前から悪い予感がしていました。もう何年も前からグレが瀬戸内海で繁殖を
始めていました。外洋でしか見かけなかった大物のグレもけっこう釣れているようです。渡船で乗り合わせた人が話して
いましたが、その人もグレを釣りに行くのだと言っていました。釣具屋の親父さんや渡船の親父さんが言っていたように、
せっかく早朝の渡船で島に渡ったにも関わらず、サヨリは全く姿を見せませんでした。秋のありふれた魚の代表格であった
サヨリが一匹もいないのです。
空は晴れ風もなく海は異常なほどに穏やかで水は澄んでいました。釣りのホームグラウンドにしている馴染みの島は
「いのこ」という、ちょっと変わった名前の島です。島と言うよりは大きな岩場と言った方が良いような、周辺を大小の岩で
囲まれた小さな島です。島の周辺は潮の流れが非常に早く、色んな種類の魚が群れるような地理的条件には申し分の
ない島です。従って、私が友人に誘われてこの島に通い始めた頃には、サヨリだけでなく他の魚もたくさん釣れるような
場所でした。毎年、10月中旬の大潮の日には早朝から島に渡り、場所を確保しておくようにしていました。こうしないと
次から次ぎへと釣り人が来て場所を占拠されてしまうからです。それくらい釣り場所としては良い場所だったのです。
チヌ、メバル、すずき、アブラメ、ふぐ、サヨリ、たこ等、何でも御座れという釣り場所でした。沖に向かって「さびき釣り」を
すれば潮の流れに乗ってきた鰯やアジ、さっぱ(ままかり)が鈴なりになってかかって来ました。
それなのに昨年はどうしたというのでしょうか。いくら撒き餌をしても寄ってくるのは、わずかばかりの小さなふぐと小さな
馬面はぎだけなのです。辛抱強く待ってみました。場所もあちらこちらと何度も替えてみました。いつまで待っても魚は
寄ってこないのです。海から吹き寄せる風は妙に生暖かく、手に掬った海水は泳げるのではないかと思うくらい温かい
のです。外気温は下がったとは言え、海水は夏のままのようです。山口の船頭さんが言っていたように、海の中は夏の
ままなのではないでしょうか。水温は容易に下がりません。ましてや瀬戸内海のように半ば閉ざされたような海では尚更の
ことです。その上、暖冬にでもなれば水温は下がらないまま、また暑い季節を迎えることになるのです。こんな事の繰り返し
が、ここ数年続いているのではないでしょうか。
外洋から瀬戸内海へハマチが入って来たり、グレなどの外洋の魚が繁殖し始めたとしても不思議ではないような気が
します。今や瀬戸内海は目に見える形で確実に変化を始めているようです。それも、ものすごいスピードで変化をしている
ように思えるのです。もう過去のように「十年一日の如く変化はない」といった表現は通用しなくなったようです。
2002年1月4日掲載
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