5日目(7月19日・・・日本時間)

ホテルのポーチから眺めた景色(この海の向こうは大西洋)

 次の日も上々の天気。天気だけは申し分ない日が続いている。ホテルのポーチにはさわやかな風が

吹き心地よい。水平線が目の前に広がり、気持ちを大らかにしてくれる。もう昨日のことは忘れよう。

色んなトラブルのあったプリマスのモーテル

 タクシーで町まで行き、朝食を買う。朝食を持ってプロビンスタウン行きの船乗り場まで歩いていく。

船が出るまでの間、桟橋近くを見て歩く。今日は何かの行事の日らしく、屋台がたくさん出て準備中。

売られているものは手作りのものが多く、これも出店しているボランティア達で作ったものだろうか。

 船はAM10:00出発。一路、プロビンスタウンを目指す。昨日の夜には灯台の明かりが見え、

半島か島だと思っていたのは、プリマス港を取り囲むように両岸から延びていた長い長い砂州

だった。従って、砂州によって囲まれた海は天然の良港になっていた。この長い砂州にも点々と

家が建っており、別荘のようだ。砂州の先端には、おびただしい数のカモメが群れていた。

船はやがて島影一つ見えない洋上に出た。日本ではどこを通っても、どこかに島が見えており、

こんな島影一つ見えないような洋上に出ると何となく不安になってくる。

 約一時間半程すると、次第にプロビンスタウンが近くなる。港に入るとヨットやボートがひしめき

あっている。この町は、元々漁港であったそうだが、芸術家達が住み着き、やがて先進的な

雰囲気を慕ってゲイ達が集まって来るようになったとのことだ。何かしら独特の雰囲気を感じる

町の景色だ。大勢の観光客が小さな通りにひしめいている。ブティックをはじめとして、色んな店が

ある。観光客は買い物を楽しんだり、喫茶店で道行く人達を眺めながらくつろいでいる。

プロビンスタウンの繁華街、しゃれたお店も多い

 私たちはレンタサイクルの店で自転車を借り、島巡りに出発した。島は私たちの様に自転車で

島巡りをしている人達で一杯だった。危うくゲイ達の集まっている海岸に迷い込むようになったり、

行けども行けども先が見えず、不安な往き道だった。島の先端は大西洋の見渡せるすばらしい所。

目の前の海は鯨も姿を現すとのことで、濃い群青色の海がどこまでも広がっていた。

後ろは大西洋、時々鯨も来るという

 時間の余裕がなかったので、大急ぎで昼食を済ませ、そこを引き返した。帰りは、往きと異なり

慣れた道となっていた。瞬く間に、岬に続く砂丘の入り口にたどり着いた。そこで少し休憩し、又、

少し走って休憩をする。そこは海水浴場となっていた。大西洋の大きな波が打ち寄せる海岸で、

たくさんの人が夏の海を楽しんでいた。それからは一気に観光客で賑わう町に戻った。

プロビンスタウン郊外の海水浴場

 レンタル自転車を返して街一番の高い塔に登ってみた。古い塔の中は螺旋状の階段になっており、

階段嫌いの家内も、楽に登れたようだ。しかし、高さはかなりなもので、頂上からは四方が見渡せ、

すばらしい展望だった。海からの冷たい風が大変心地よく、体中の汗も瞬く間に乾いてしまった。

プロビンスタウンの街の象徴

塔の最上階から眺めたプロビンスタウンの景色

 船の出発までわずかな時間となり、大急ぎで塔を駆け下りて港まで。待っていた船に乗り、再び

プリマス港を目指す。全く、この時ばかりは、往きは良い良い帰りは怖いだった。港を出てから

しばらくして、波は次第に荒くなり、プロビンスタウンが見えなくなる頃から、船は木の葉のように

波にもまれ始めた。乗客はみんな顔色もなく、ただ、おろおろするばかり。中には気分が悪くなり

横になる人も出始めた。家内は怖い怖いと言って顔を伏せ、娘は船酔いをしたらしく、気分が悪いと

声もなく座席にしがみついていた。波の高さは優に5mを越えていたのではなかろうか。

 波の底になったときは、外の景色が見えないくらい波が高かった。波が激しく船底を打ち、大波に

ぶつかるのを避けるため、エンジンを止めて波をやり過ごす。何度もこんな事を繰り返しながら

やっと、プリマス港が見えるところまで戻ってきた。出ていくときはあんなに穏やかだったのが

何か嘘のような感じだった。外海の怖さをこの時ほど感じた事はなかった。今日のような事が

一年に何度かはあると言うことだった。私達はプリマス港を遠くに見て正直ほっとした。

 船は定刻より30分遅れでプリマス港に入った。港が遠くに見え始めた頃から波も小さくなり、

乗客の表情も明るくなり、元の船内の賑わいを取り戻した。怖い思いもしたが、またとない

経験もでき、良い旅だった。

 心配をしていた帰りのバスにも何とか間に合い、ボストンに戻ってきた。とりあえず、娘の下宿先に

預けておいた荷物を取りに行き、その足でホテルに入った。今日の宿は、ホリデーインブルックリン。

ホテルの部屋がダブルブッキングだったためホテル側のサービスでスイートルームとなった。

大きな部屋に大きなベットが、でんと備え付けられていた。なかなか感じの良い部屋だ。

 シャワーを浴びて夕食に出かける。行き先は近くの寿司屋。娘が時々行くという店だった。

久々の日本食に大満足。経営者は日本人のようで、店員さんも日本から来て永住をしているという

女性だった。演歌を聴いて、いい気持ちだった。色々あった旅の思い出を振り返りながら

ビールを飲んでいると、旅の疲れも少しずつほぐれてきた。その晩は久々に熟睡した。

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